映画「ジェシー・ジェームズの暗殺」

ブラッド・ピット主演の映画「ジェシー・ジェームズの暗殺」を観た。意外にも出来の良い映画で驚いた。

アメリカ合衆国の大衆文化史におけるジェシー・ジェームズは、新選組の土方歳三のようなアンチ・ヒーローであり、とても人気がある。そのキャラクターの持つカリスマ性は、西部のガンマンの中でも突出していると言える。

その背景についてちょっとだけ書いてみたい。



ジェシー・ジェームズとその時代

ジェシー・ジェームズと兄のフランク・ジェームズは、南北戦争において、ウィリアム・クァントリル率いるクァントリルズ・ライダーズという南軍のゲリラ部隊に身を投じる。南軍の苦しい戦いと、南部共和国の敗戦を通じて、ジェームズ兄弟はプロの犯罪者として生きる道を選んでゆく。

彼らは、決して同時期の西部のならず者たちのように、自暴自棄で犯罪に走った者たちではない。将軍クラスの軍人を含む元南軍ゲリラのコミュニティの中で生き、家庭人として家族を大切にし、紳士として周囲から尊敬を集めながら、遠出してはヒットアンドアフェー方式で強盗・殺人を行い糧を得ていた。ジェームズ兄弟とヤンガー兄弟の強盗・殺人は、犯罪であると同時に、戦争継続主義者(敗戦を認めない南軍ゲリラ)の抵抗運動や復讐行為の側面もあり、多くの南部の民衆に支持され支援されてもいた。




ジェシー・ジェームズに関しては「ロングライダーズ」という名作映画が過去に作られている。「ロングライダーズ」は、ライ・クーダーの音楽が素晴らしい。ストーリーも単純化されよくまとめられている。

 一方、「ジェシー・ジェームズの暗殺」は、以前作られた「ロングライダーズ」などよりも、より史実に即した形でリアルにジェシー・ジェームズを描いている。他の映画よりも優れていると思える点は、ジェシー・ジェームズが以前の映画が描いたよりも現代に近い時代に生きていたこと、現代の郊外住宅地のような場所で偽名で家庭生活を送っていた事などを描いている点。晩年のジェシー・ジェームズは、西部のガンマンと言うよりは、都会のマフィアやギャングに近い。

実際に、口封じに昔の仲間を殺して行くところなど、マフィアそっくりである。

スコセッシの映画「グッドフェローズ」でデニーロが演じた、実在の空港強盗&殺し屋のジェームズ・"ジミー・ザ・ジェント"・バークは、自分の息子を"ジェシー"と名付けて、ジェシー・ジェームズを尊敬していたそうだ。そして、バークもまた、ジェシー同様に、口封じに昔の仲間を殺しまくる冷酷さを持っていた。

ジェシー・ジェームズの孤独、冷酷、得体の知れなさ。そして、ジェシーが死ぬ瞬間まで発していた、殺気・迫力、カリスマ性、そういったものを、この映画はよく描いている。

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