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キューブリックの映画「バリーリンドン」

スタンリー・キューブリックの映画「バリーリンドン」を、中学生以来、再度見た。

中学生当時は、黒澤映画やヴィスコンティの映画のような濃厚さの無い、あっさりした歴史ものという印象だったが、今見ると、黒澤やヴィスコンティよりも、一見粗削りに見えて、全体としてみると上質な映画に思えた。

自然光のみを使って撮られたという映像の美しさは際立っており、バロック絵画~クリムトの絵画に至るオーストリア芸術の美の世界を映画において実現している。

時代背景は、ナポレオン戦争よりも1世代~2世代前の時代だが、ヨーロッパを舞台にした七年戦争を背景にしており、当時のイギリス軍人の心意気などはホーンブロワーシリーズに通じるものがあり、とても面白く見ることが出来る。

私がこの映画で一番心惹かれたのは、アイルランド人のヨーロッパにおける立ち位置を体現しているとも言えるバリーリンドンの流浪の人生そのものと、途中に登場する盗賊一味、そして、バリーにこの時代を生きてゆく知恵を授ける、同じくアイルランド出身のシュヴァリエ・ド・バリバリという賭博師(兼 詐欺師)だ。

こうした小国生まれの漂泊民が、大国同士の戦争や貴族のおこぼれにあずかりながらも逞しく生きていた時代。最後にサッカレーが書く、「どんな高貴な人間も身分の低い人間も、今はみんな墓の下だ。」という言葉が良い。

貴族たちを騙して狡猾に生きるバリーであっても、自分の息子にだけは惜しみない愛情を注ぎ、それが行き過ぎた結果息子の命を奪ってしまうエピソードも感慨深い。愛情がある人間は憎めない。



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