幸せの時間

国友やすゆき「幸せの時間」を全巻読破した。

登場人物のファッションや街の雰囲気がまさにバブルの余韻が漂っていた1990年代の日本の世相を映しており、何とも言えない懐かしさを感じて引き込まれてしまった。ストーリーは、最初は幸せな家庭ドラマを思わせたが、ドロドロの不倫ドラマの末に、最後は、梶原一騎の「人間凶器」のような破滅的な展開になり、最後までストーリーにグイグイ引き込まれた。



ロジェ・バディム(ロジェ・ヴァディム)はサドの小説を映画化するときに、「情動の激しい時代」としてナチス政権下のフランスを物語の舞台に描いたと言うが、今の日本は情動が停滞した時代(コンプライアンス重視の時代)である。バブル~バブル崩壊期は普通のサラリーマンでも出世のためには犯罪に手を染めるような情動の激しかった時代なので、「幸せの時間」のような野心を持った男の破滅・泥沼不倫の末の家族の崩壊劇がリアリティーをもって成立することができたのだ。

また、この物語は一個の新築の家が舞台である。幸せの時間を過ごす場所に見えた家が最後は誰もが逃げ出したくなるような修羅場になる。程度の差はあれ、バブル期に新築の家を建てた家庭の多くが同様のストーリーを辿ったとも言える。

主人公が、7000万で買った家ではなく、不倫用に借りたボロい安アパートに「何だろうこの安らぎは・・・。今の俺の身の丈にあった場所はここなんだ。」とつぶやくシーンが妙に印象に残った。



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